HM・プロローグ
エル特急!
何だか懐かしささえ感じるようになったこの呼びかたは、
特急しらさぎ、ひだ、しなのがエル特急と呼ばれなくなるこの春、ついに過去のものとなってしまいます。
最初のエル特急が登場したのが1972年10月。
「自由席を含むこと」や「定時発車」などの条件にかなった9列車が
最初の段階で指定されました。
そして、1978年10月にイラスト・トレインマークが採用されると、「L」マークが左上の隅に含まれるようになり、一大勢力を持つ列車群であることを示すステータスシンボルのようにもなっていきました。
上野駅で見る「エル特急」ひばり、とき、はつかり・・・、大阪駅で見る「エル特急」雷鳥、名古屋駅で見る「エル特急」しなの、しらさぎ・・・。
「次々来るなぁと思ったらやっぱりエル特急か。」 なんて言う、一般の方の声も聞かれるほど、その呼びかたは定着していました。
「L」マークは左上!
イラストマークが一斉採用され、この「L」マークが前面に表示されるようになった1978年10月の時点では、いずれの列車も左上に添える形で統一されていました。イラストを考案する段階で「L」マークを配置することを前提にしていたでしょうから、非常にバランスよく統一されています。
ところが!
その不文律を破ってしまう列車が3年後に登場します。
おきて破りのエル特急踊り子号
1981年10月1日、特急あまぎ号と急行伊豆号を統合して新規設定されたエル特急踊り子号がデビューしました。
これまでにない斬新なヘッドマークは、踊り子の3文字それぞれの背景に赤い丸を配したもので、新しい愛称をPRするのに十分なインパクトがありました。
ただし、それと引き換えに「L」マークを左上に配置することができなくなったのです。それで、左下という史上初のパターンが登場しました。
こうして制約から解かれた「左上の不文律」は一気に崩れ始めました。
右上だっていいじゃないか!
その翌年には何でもありになっていきます。1982年11月15日改正は東日本の鉄道界を大きく揺るがした大改正でしたが、その際に誕生したエル特急たざわ号では「L」マークが右上に登場します。それは田沢湖のシンボルともいえる辰子姫の姿を左側に大きく描いたため左側は上から下まで埋まってしまったからです。
余談ではありますが、上の踊り子号をはじめ、このころの列車ではすでに黒岩保美氏によるヘッドマークフォントを使用しなくなっている例も多く、この特急たざわ号もそのひとつです。とはいえ、すべてがそうだというわけではありません。
そして右下にも・・・。
時を同じくして、エル特急化されたひとつの列車もイレギュラーな配置をしたマークでした。エル特急いなほ号です。
このマーク、別に右上でもスペースはあるのですが、稲穂のイラストの比重を考えてのバランスでしょうか、初の右下配置が登場しています。
このいなほ号のマークについては、JR東日本がエル特急という呼称を廃止した2002年12月以後も485系を使用していたので、12年近く見られましたが、その間「L」マークのないイラストHMと、「L」を黒くつぶしたようなやっつけ仕事のマークが存在していたのはちょっと面白い点でした。
その他のイレギュラー「L」マーク特急は・・・
その後も、当初の不文律に従った左上配置を守る列車が多かった中、次にこの点で注目を集めたのは意外な列車でした。
1985年3月、四国にディーゼルのエル特急しおかぜ号が新たに指定を受けました。そして登場したのが右上に「L」マークを配置したイラストHMでした。(左上でもよさそうなんだけどなぁ)
以前に伯備線のエル特急やくも号がディーゼル特急でありながらエル特急指定を受けていた例はあったものの、まだまだこのときの段階では意外な感じがしたのを思い出します。
それからさらに3年。
瀬戸大橋開業を記念して設定された列車、マリンやくも号のイラストマークでは踊り子号のような左下の「L」マークが登場しました。実際には左下の隅より少々上気味だった用に思います。考えようによってはこれが一番イレギュラーかもしれませんね。ちなみに、特急やくもは普通の位置です。
あともうひとつ、右下に「L」マークを配置した列車、それは山形新幹線からのリレー列車的役割だったエル特急こまくさ号です。私が個人的にはとても好きなデザインで、雪野原になった湯沢・横手などの田園を走る国鉄色485系をかわいらしく引き立てるようなヘッドマークでした。また、かもしかカラーの485系との相性もよかったですね。
バックのピンクをいっそう清々しい印象にする白い文字が上半分に配されて目立つように、バランスの取れたレイアウトにする上で、「L」マークを下に置くのはベストな選択だったと思いますね。
いまや絶滅寸前の「L」マーク。しかし・・・
エル特急という種別が2017年春、JR北海道からも姿を消し、残っていた「JR東海の区間を走る一部列車」もシンプルに「特急」となります。さらに、イラスト・トレインマークがどんどん失われていっている今、「L」マークそのものが壊滅状態にあるといっても過言ではありません。
ところが!
いまやエル特急ではなくなった列車の一つが過去の名残のように「L」マークを表示しているのです。それは国鉄型車両を使用する特急なのですが、お分かりになりますか?183系を使った臨時特急あずさではありませんよ。
その列車とは伯備線の特急やくも号です。
電車化されてから今までずっと変わることなく381系を使用し、リニューアルを重ねてきました。最近では関西圏から移動してきた381系が追加されたわけですが、なんとそれらの車両でもまたこの「L」マークが入っているというのです。
というわけで、絶滅間近な「L」マークの“現役”の姿を見たいと思われる方は、岡山~出雲市を走る特急やくも号を追っかけに行ってみてくださいね。
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