超高性能気動車・キハ285系とは?
用キハ281系、スーパーおおぞら用キハ283系に続く付番を受けたキハ285系、この番号から容易に想像できる通り、日本が誇る高速運転用技術のひとつである「振り子式」を採用した気動車です。でも実は、新幹線のN700系などでも使用されるもう一つの技術、「車体傾斜装置」を併用するという点で世界初の車両で、今後の北海道内の高速輸送に大いに寄与すると思われた車両でした。曲線通過速度140km/hを想定していたとも言われています。
そして、2014年に完成した3両の試作車が存在するのですがその開発費は25億円ほど。どれだけ期待をかけられていた存在なのかがうかがい知れます。
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期待が一気に暗転したJR北海道
しかし、それと前後してJR北海道では安全に対する対策を怠っているのではないかという厳しい指摘が相次ぐようになりました。現実問題として、その点は早く対処するようにとの指示に早急に従わざるを得ない状況でした。
それは当然のことではありますが、資金面で大きな問題を抱えている状況でそれを優先するとなると「無駄な経費が掛かるものをどんどん削る」ための取捨選択に迫られます。開業を控えていた北海道新幹線関連での経費削減は無理があったため、在来線中心で考慮したのでしょう。ローカル線の駅廃止、路線廃止、本数削減、老朽化車両廃車・・・。そして・・・
構造が複雑=のしかかる保守費用・時間
キハ285系はとにかく高性能。それは非常に複雑な構造で技術の結集ともいえる車両であることを意味します。そうなると、定期的に行わなければならない保守・点検にかかる時間も多く必要、人員も、その教育も・・・というように、その車両を導入することによって多くの経費が掛かってくることが重荷になってしまったのです。それで、営業用車両でなく検査車両として活用できないかという案もあったようですが、そうするためにかかる改造費を考えると費用対効果で「割に合わない」と結論付けられてしまいました。それでつい先日「キハ285系は未使用のまま廃車」という報道が出たわけです。
JR北海道がだめなら他のところで使えないか?
せっかく25億円も投じたこの車両ですからなんとか役に立たないものでしょうか。JR他社が買い取って救済してあげるような姿を見たいものです。
とはいえ、この車両を買い取るのであれば「非電化区間」で「高速化が待たれる」路線であることが条件になることでしょう。つまり、現在快速列車で運転されている観光路線の多くは「早く、遠くへ」という感覚ではないのでなかなか適さないかもしれません。
★JR西日本では
現在も多くの気動車特急を運転している中でJR最大のエリアを持つ会社はJR西日本。スーパーまつかぜ、スーパーおき、スーパーいなば、はまかぜなど、いろいろな列車があります。これらの列車はキハ187系・キハ189系という、比較的新しい形式の車両なので置き換えの必要はありませんが、仮に曲線通過速度が20km/h向上するとなるとそれなりの利用価値を見出せそうです。
【1】 一例として、智頭急行線との相互直通運転をしている特急が2つありますが、岡山発着がスーパーいなば号でキハ187系、京都発着がスーパーはくと号でHOT7000系。性能ではそれほど差がないようですが、スタイルには大きな差があります。(言ってしまった!)流線型の先進的なデザインのHOT7000に対してぶつ切り金太郎飴のようなキハ187・・・。ここにキハ285系を1編成投入してイメージアップを図るのはどうでしょう。
【2】 もう一つ、過去に走っていた特急列車が鈍足で利用者がいなくなってしまったと噂の「特急いそかぜ号」に復活投入という大胆なプランはどうでしょう。キハ181系で最後まで貫いた特急いそかぜ号は表定速度60km/h前後という、「観光列車か?」と思うような鈍足でした。特急おき号、特急くにびき号がどんどん高速車両に変わる中、取り残されてしまった存在でした。
もしこの列車にキハ285系を投入して表定速度を90km/hまで上げるとかなり利用価値の高い列車になりそうだと思います。益田~下関:1時間50分、東萩~下関:1時間15分が実現すれば、車よりも特急に乗っていこうという気持ちになりそうです(萩~下関は車でおよそ2時間30分ほど)。大河ドラマで注目された萩へのアクセスが新山口駅からのバスだけという状況の中、状況を打開するのにうってつけの車両かと。ちなみに、廃止直前の特急いそかぜ号も3両編成でした。
★JR東海では
ご存知、JR東海は国鉄型車両を淘汰し、すべてJR化後の車両にした先進企業です。その方向性から、「車両のバリエーションを増やさない。統一できる部分は統一する」というスタンスが見えるのでなかなか厳しいかと思います。ただ、「この部分に投入するのはどうかな?」と思える部分がないわけではないので書いてみます。
現在の気動車特急と言えばキハ85系を使用するワイドビューひだ号とワイドビュー南紀号です。路線で言うと高山本線・紀勢本線を中心にした区間です。ひだの方には富山発着という少々飛び抜けた存在があって、あとは自社内路線を走行します。南紀の方は、大半がJR西日本区間の紀伊勝浦まで乗り入れますが、その距離はわずかです。
さて、このワイドビュー南紀号のことを考える時、「南紀方面の最大の観光地に到達していない」ということがずっと気になっていました。そう、白浜です。もっとも、白浜に行きたければ新幹線で京都か新大阪まで行って特急くろしおに・・・と考える人も多いと思いますが、そもそもJR東海が白浜への乗客をすべてJR西日本に譲る必要はないわけで、高速走行できる車両があるのなら乗り入れたらいいのではないかと思うのです。
この区間、名古屋近郊でスピードが上がらないのが悩みどころではありますが、この車両を導入できれば四日市以南では大いに本領発揮できそうな気がします。名古屋~白浜を表定速度80km/hを上回るくらいで走れば4時間切り。結構いいんじゃないでしょうか。
★その他
車両の買取には当然ながら資金が必要なので、資金力が低い会社や災害直後の対処に追われている会社をこうした案に含めるのは酷というものだと思いますので、あとはJR東日本ですね。
本来なら北海道と関係が深いJR東日本が本命かと思いますが、なかなか適当と思える路線が思い当りません。気動車の特急がすでにないこと、快速列車として運転すると収益が上がりにくいことがあります。
強いて挙げれば、現在キハ48形の改造車両で運転しているリゾートみのりを置換えし、区間延長して仙台~(陸羽東線・西線経由)~酒田にして運転すると面白いかと思います。まぁ、無理して設定することもないかもしれません。
よみがえれ、キハ285系!
結論として、「開発費用を何とか回収したい!」ということと、「技術の粋を無駄にしないで!」ということでこうして書きましたが、なにか良い結論が出るといいですね。JR北海道の広報の方も「今後の活用法について検討しているところ」とおっしゃっているようなので、廃車=解体というわけではないと思いますが、最も有効な活用法にたどり着いてもらいたいものです。