豪雪と運転距離との戦い
◆大阪~札幌:約1500kmで22時間ほど。上野~札幌:1200km以上で16~17時間。
これほどの長距離&長時間運転の列車たちが定期的に運転されていたのがほんの昨日のように思えます。カシオペア、北斗星、そしてトワイライトエクスプレス。いずれの列車も、下り列車で走った編成が翌日に上り列車となる、そんな運転形態が長く続けられました。
温かい季節にはほとんど問題にならないそのシステムも、厳しい冬になると時折大変な問題を引き起こしました。
それは「大雪による下り列車の遅延で上り列車の準備時間が取れなくなる」という状況です。例えば、トワイライトエクスプレスを例として挙げますと、午前10時前に札幌駅に到着してその後小樽寄りの手稲にある札幌運転所に回送され、札幌発14時過ぎの列車となります。つまり、すべての準備を整えるのに4時間も猶予がないということです。
※画像提供:An’s Railway Memo様
大雪による列車遅延の時には・・・
トワイライトエクスプレスの運行期間の歴史をたどると、なんと25時間の遅延が発生したこともあります。もっとも、そんな大規模な遅延はごく稀であるとしても、厳冬期になると2~3時間の遅延は結構高い頻度で生じていたようです。となると、準備時間が取れなくなってしまうということは明らかです。
では、どうやって対処するかと言いますと札幌駅まで運転せずに途中で運転打ち切りして時間を作り出していました。函館駅や五稜郭駅で打ち切りというケースが多かったようですね。函館~札幌間は往復9時間ほどかかりますから、函館駅で運転を打ち切ることによって折り返し列車の準備をするための時間が生まれるというわけです。
上りの寝台特急が函館発になる場合
上りの列車のセッティングをする時間が生まれるという意味ではこの方法は非常に有効だと容易に理解できますが、そうなると問題になるのが「札幌~函館間の切符を持っている人もその間乗れない」ということです。当然ですよね。そこで登場するのが代走列車、ピンチランナーです。
※画像提供:タケチャン様
打ち切りになる下り列車の場合は乗客をそのまま放置できないので札幌までお乗せするというのは当然ですしイメージしやすいのですが、上り列車の場合は始発駅にその寝台特急がやってこないということで驚かれることが少なくありません。
この代走列車は「臨時」のヘッドマークを掲げてキハ183系で運転することが多かったようです。代走とはいえ特急型車両を使用することが求められているのですね。ただ、JR北海道は車両運用にあまり余裕がありませんので良くてNN183、多くは初期型のキハ183だったと聞いています。
こうして考えると、長距離列車の運転にはいろいろな苦労があるのだなぁとあらためて考えさせられますね。利用者にも「遅延を前提にした余裕ある計画」と、「代走もありえないわけではないという理解」が求められていたのです。
レア体験と納得できるか・・・
これらの寝台特急に乗りたいという方の多くは「優雅な時間を過ごしたい」とお思いのことでしょう。そのひとつが食堂車で過ごす時間です。前もって乗車体験が書かれたブログや旅行雑誌の特集をいろいろと読んだりして、「このハンバーグのディナーがいいね」とか「ディナーはこちらにしてパブタイムは・・・」なんて考えてその日を楽しみにする人も多かったようです。
でも、代走列車での運転になるとそのプランがすべて吹っ飛んでしまったりしてがっかりさせられます。上り列車のディナータイムがなくなって、暗くなった函館駅から目的の寝台特急に乗るというわけです。
これまで何度も利用してきた人や、レア体験を楽しめる鉄道ファンならそれでもよかったのかもしれませんが、一般のお客様にとってはちょっと酷な感じがしましたね。
北の定期寝台特急がなくなった今・・・
そんな時代も過去のものとなりました。やはり財政的な面でいっぱいいっぱいのJR北海道にとってはそのやりくりに追われるのをなんとか避けたかったのかもしれません。ツアー列車であればまた違った扱いができますし、ましてJR東日本がおおむねやりくりしてくれる列車ならありがたい、ということなのかもしれません。
でもまたいつか、長距離の定期列車が復活してくれて、私どものような庶民でも乗れるような時が来たらいいなぁと願ってやみません。 あ、できれば代走なしでお願いします(笑)。