札幌から首都圏へ~最も早い時間に着けた列車~
2016年春、多くの人たちに惜しまれながら急行はまなす号が廃止となりました。このことに関してはもちろん、趣味的な観点で「ブルートレインの末裔が・・・」とか「最後の急行列車が・・・」、「機関車に牽かれる列車が・・・」といった声が聞かれ、鉄道ファンである私もその思いを感じる者の一人なのですが、今回は少し割り切った「実用的観点」で分析してみたいと思います。
この急行はまなす号が担っていた実用面での役割にはいくつかの特色があります。
まずは上り急行はまなす202レを考えてみます。
【上り202レ】
●青森に早朝に着くため上り新幹線の始発に間に合う。
●苫小牧より先への終電の役割(特に東室蘭)。
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終電の役割は特急すずらん12号にバトンタッチ
・22:00 札幌発。東室蘭到着時点でまだ日付が変わる前の23:50。そんな時間設定はかなり需要が高かったようで、さっそく特急すずらん12号が設定されました。出発時刻は全く同じままで、東室蘭着が23:33となったので17分早く着くようになります。また、室蘭駅まで行くということで利便性は確かにアップしたことでしょう。
・JR北海道としては何としても一人あたりの利益率を上げたかったでしょうから特急化することで単純比較して1000円以上アップするこの方法を以前からもくろんでいたとしても不思議ではありません。あとは利用者が車両のグレードアップと時間短縮を評価し、料金の上昇を受け入れてくれるかどうかが課題ですね。
始発新幹線接続列車の代役はいない!
一方、簡単に代役が配置された「終電役」とは異なり、代役がいないのが始発新幹線への接続列車。
今までの急行はまなす(札幌22:00発)に乗るとどれくらい便利だったかと言いますと、 新幹線に乗り継いで「東京に朝の9:23に到着できる」 ということです。 これは東京での一日をフル活用できることになりますからかなり実用的です。ちなみに、以前札幌と上野を結んでいた寝台特急カシオペアの上野到着時刻が9:25でしたから、ほぼ同じ。もう少しビジネスユースだった寝台特急北斗星は9:38分ということで、こういう使い方の可能性が急行はまなすにはあったのです。参考までに、飛行機だと羽田空港に9:10到着(ANA)が一番早い様ですので、乗降にかかる時間などを考えるとほぼ同じレベルの結果になりそうです。
急行はまなすがなくなった今・・・
しかし残念なことに急行はまなす号がなくなった今、その需要にこたえる列車はありません。いえ、夜行を抜きにして応えられるはずがないのです。「札幌~新函館北斗」間のスーパー北斗号での所要時間がおよそ3時間10分。北海道新幹線の上り一番列車に間に合わせるために札幌駅を午前3時に出るように設定するはずはありません。
それで、既存のスーパー北斗2号に乗った場合どうなるかと言いますと、札幌を6:00に出発して新函館北斗に9:11着。9:31発のはやぶさ16号に乗って東京に着くのが14:04。目を疑ってしまいました。これでは飛行機に利用者が流れて当然だという気がします。やはり、北海道新幹線の利用価値を上げることをしなければいけないのではないでしょうか。
北海道新幹線接続用【夜行】快速ミッドナイト復活!
さて、ここで札幌から函館(新函館北斗)を結ぶ夜行列車の設定について考えてみたいと思います。この列車はあくまでも「北海道新幹線の利用価値向上」を目的としたものですので、この列車単体での高い収益を求めてはいけないと思います。つまり、特急・急行という優等列車としてではなくあくまでも夜行快速として運転し、設備による料金差だけ設けた方が良いでしょう。自由席は運賃のみ・ドリームカー・のびのびカーペット、それぞれに設備料金を設定して利用者に選ぶ自由を与えます。
この区間からすると、過去に走っていた「快速ミッドナイト」や「急行すずらん」が思い浮かびます。「特急すずらん」ではありません。この急行すずらん号の運転形態として1980年の時刻表から見てみますと・・・・
札幌発23:15で、千歳を過ぎたころに日付が変わり、東室蘭には1:40着で20分停車。その後長万部でも30分を超える停車をして渡島大野(新函館北斗)は5:52ごろ通過、函館には6:10着となっていました。とてもゆったりとしたダイヤ設定ですから、新幹線連絡列車として心配される「列車遅延」はあまり心配なさそうです。その一方で東室蘭への終電(帰宅列車)としての現実性は低くなりそうですね。もっとも、JR北海道としても一旦特急すずらん12号で高まった収益性をふたたび下げるような列車設定はしたくないはずです。
そうなると、特急すずらん12号はそのまま残して、新幹線接続列車はもう一つのルートで・・・
山線経由で快速ニセコ?
室蘭方面への終電の役割を考えると、小樽方面にもそんな終電的な列車があってもいいのでは?と思います。2016年の新ダイヤでは札幌19:44発⇒小樽20:15着の快速エアポート191号を最後に小樽方面の速達列車は終わりとなります。これって、結構早い時間じゃありませんか? それで、この(仮称)夜行快速ニセコ号に小樽方面への終電の役割を付与します。
例えばですが・・・23:30ごろに出発し、琴似・手稲・ほしみ・小樽築港・南小樽・小樽と停車。小樽駅には日付けが変わった0:10ごろに到着します。そして、出来るだけ多く新幹線接続利用者を拾えるように、小樽に着く最後の列車0:38着(282M小樽止)の到着を待ち、0:45ごろにゆったりと出発します。
夜行列車ですから、特急北海並みのスピードではなくあくまでも急行ニセコ以下のレベルの「揺れを抑えた」スピード設定にし、長万部到着は3:50、森には4:45到着といったところでしょうか。ここから1時間もかからないで、新函館北斗に5:50には到着できます。この駅に新幹線の一番列車の発車前まで停車して乗り換え客に十分な余裕を与えることもできるでしょう。その後列車は函館駅に向かいます。
肝心の車両の運用は・・・
おそらく誰もが認めることでしょう。「今のJR北海道に夜行快速の車両を新製するお金はない!」と。
でも、簡単に改造できそうに見える車両がありませんか?そして、高速運用には就くことが出来なくても「低速の快速ニセコなら・・・」と言えそうな。
一つはここ数年稼働率が下がっている「クリスタルエクスプレス」。この車両は二階建て構造のキサロハ182を含んでいる最後の編成。この車両をカーペットカーと個室寝台の二階建て構造にしてキサロハネ182とし、あとの車両をドリームカー、指定席、自由席として活用できると思うのです。話題性があって人気が出そうだと思いませんか?車両のカッコよさ、全面展望、そして長い車両形式名(笑)。
ここ数年、北海道でもスキー人口減少のあおりを受けてジョイフルトレインの冬場の稼働率が低い状態が続いているようなのです。車両基地内で雪に埋もれてしまうこともあったとか。そうであればいっそのこと1編成を思い切って夜行専用にしてもいいのではないでしょうか。
列車名は・・・「ニセコ」は臨時特急で使われたりするので、やっぱり快速ミッドナイトに落ち着くのでしょうか。
人気の車両で話題をさらえ!
列車の設定はやっぱり早く認知されることと人気の維持、そして実際の利便性によってクチコミを得ることだと思います。ぜひともJR北海道さんにはこうした列車を真剣に考えてみてもらいたいと強く願います。
そうして新幹線接続列車を使うと東京に午前中に到着できるので、日本のビジネスマンの強い味方になることでしょう。