8月26日に報道された陸羽西線の運転再開後についてのニュースには少しの驚きとある程度の納得が入り混じった思いで拝見した。
高屋駅
戸沢村の中心駅である古口駅と庄内町にある清川駅の間にある高屋駅。この高屋駅近辺の区間が今まさに国道47号線バイパスのトンネル工事であまりにも距離が近いということで3年越しの陸羽西線運休の要因となっているエリアである。
つい先日、8月20日にこのあたりの様子を確認し、トンネル入り口の様子がはっきり表れてきたのを見てきたばかりた。
撮影位置は高台にある高屋駅のすぐ下の国道47号線上。写真で分かる通り、古口方面からのトンネルが貫通してその入り口が現在の47号線のすぐ際に当たることが見て取れるようになっている。なお、トンネルの上の高い所に見えている、もう一つのトンネルが陸羽西線のトンネル。確かに大規模な工事をするにあたってはかなり気になる至近距離なので、長期運休は仕方のないことだったのだろう。というわけで、工事開始から当初予定の2年が経過して「そろそろ再開か?」と思いきや、工事が難航していて工期が伸びているのだとか。
それにしても、この辺りを通るたびに思っていたことがあり、それは「この駅って、いったい誰が利用するのだろうか?」ということである。はっきり言って、ここには何もない。しかも、この駅に到達するには国道からきつい坂を上って高台にある。学生さんがもしわずかながらいるとしても利用したいという思いにはなりにくい、それが正直な感想だった。
そこにきて、8月26日の報道である。「高屋駅は通過・・・」。
乗る人がいないなら通過は当然。「やっぱりな。」と思ったのだが、実をいうと、この駅に関してはずっと以前から「そもそもなぜここに作ったの?」という思いが強く、「もっと最適の位置があるんじゃない?」と思っていたのだ。その位置とは2.3kmほど西に移動したところ・・・。
国道47号線を西に進むと「白糸の滝ドライブイン」という建物が見えてくる。そのあたりの陸羽西線はというと、高台からす~っと降りてきたというのか、国道とそれほど変わらない高さで並走する感じになっている。まさに隣り合わせ。この白糸の滝ドライブインは一つの目印で、そこを過ぎたところに「最上峡芭蕉ライン観光」の乗船場があるのだ。現時点で高屋駅がこの最上川観光のアクセスに役立っているとは考えにくい。ほとんどの人は自動車で来ていることだろう。しかし、もしこのすぐ前に駅を移設することができればある程度の観光需要を発掘することができるのではないだろうか。
確かに、駅の建設用地が確保できるか、道路横断はどうかといった課題はあるだろうが、そこは目的を特化した駅として直結する歩道橋を付けてもいいのではないかと思う。
いずれにしても「観光資源を生かしていない」という所に歯がゆさを感じながらずっとその存在を見てきた「高屋駅」であり、なるべくして通過駅となるこの駅だからこそ、今一度「駅の位置適正化」という観点で考えてみてもらいたいと思うのだ。下の画像のようなイメージである。
ローカル線が抱える問題として大きなものの一つは、「現行の駅設備が現代のニーズとずれがある」ことだと私は思う。それは単純に「近辺の人口が減った」ということだけでなく、「もっとふさわしい位置に駅を作っていない」ということが少なからずある様に見えるからだ。
駅移転の実例~宗谷本線・名寄高校駅~
2022年3月12日に、約1.5kmほど北に位置をずらして新装開業した駅がある。JR北海道の宗谷本線・名寄高校駅だ。元の駅名は東風連駅。学生の利用者が1日に1人あるかないかくらいだったのが、移転後は現在は学校へ通う手段として確実に選択肢の一つになっている。もっとも、決して大きくはない地方都市の高校であるゆえ、そもそも生徒数も400人を切るくらいだという。その中の多くは徒歩か自転車で通学できる圏内として、鉄道通学者はわずかかもしれない。
とはいえ、大切なのは選択肢の一つとして自信を持って示すことができるということなのだ。
羽前前波駅
高屋駅よりずっと新庄駅に近い所にある羽前前波駅。こちらに関しては置かれている状況がかなり異なっている。工業団地の最寄り駅として1966年に開業したとの記述がある資料でみられるが、少なくとも現在は付近にそのような場所は存在しない。2000年代に入ってからの統計では一日に20人前後の乗客数だったようだが、近年は10人にも届かなかったとみられる。
この10人以下という数字をどう考えるか?だが、近年「駅の廃止」が相次いでいるJR北海道ではそのほとんどが一日に1人というようなレベルでの廃止である。そう考えると「常時通過≒実質廃止」の結論は時期尚早に見える。
「乗る人がいれば止まる」方式
そこで、こんな方法ができないかと思うのが「乗る人がいれば止まる」方式だ。時刻表上ではカッコ書きで時刻を示すといった形になるだろうか。
これはつまり、ほとんど利用者がいないゆえ通過を前提とした考えである一方で、利用したい人がいる時にはその乗車する意思を運転士に知らせる(例えば到着1分前まで)ことによって「利用者がいる時だけ止まる」という方式だ。
乗車意思を知らせる方法は、駅に設置された「乗りますボタン」を押すだけ。列車到着1分前を過ぎてしまったら押すことができないような工夫もあればなおよい。 別の方法としては、もっと広範囲に目を向けて「各地のローカル線共通のアプリ」を開発し、同じタイプの駅で同じシステムを採用し、乗車意思を伝えられるようにしてもいいかもしれない。
その場合のメリットだが、次のようなことが考えられる。
① これまで停車していた駅を多くの場合通過するゆえ、「停車&再始動」が少なくなる。
② 「停車する可能性」を考えつつ進行するため比較的ゆったりとした揺れの少ない運転となる。
③ 同様のシステムの駅を複数設けることにより、(通過前提の駅が増えて)時間短縮もいくらかできる。
そうすると結果的にメンテナンスコストの面でもプラスになることだろう。
まとめ
2年以上にわたる運休の後、そろそろ運転再開の話が出てくるかなと思ったこのタイミングで、実質的に駅の廃止のような話が出てきたのは結構ショッキングではあった。でも、もしもその後の話が適正化、積極的調整につながったり、まして今後のローカル線維持の在り方に役立つようなものであるとしたら、この話題も悪くないと思う。
今後の成り行きに注目しつつ、快く受け入れられるような話が出てくることを願いたい。