◆到着日も走り回るぜ!
さて、これからどこに行こう? 壮大な時間つぶしに最適な所・・・。
こういう時に北海道ワイド周遊券はとっても便利だ。
特急の自由席に乗り放題だからいろんな候補地が浮かんでくる。
とは言っても、どこに行くのがベストな時間つぶしなのか?
今さらながら時刻表をパラパラとめくって考えてみる。
特急の自由席に乗っていけるところ・・・。
ということで7:03分発の網走行き特急オホーツクが最善に思えた。
そう、机上の計算をしていたこの時点では。
そうと決まれば、乗車するまでの時間を有効に使いたい。
まだ朝の6時30分。 まずは、駅のスタンプ探し。
それとついでに改札口で下車印をもGETしておいた。
その直前のことだが、ワイド周遊券のA券(往路の切符)を先にはずしておいた。
5年前、中1の時には「東京ミニ周遊券」を「A券」がついたまま
改札で見せたことによってA券を回収されてしまった教訓を思い出したからだ。
こうしてB券だけでなくA券も残すことができた!。
札幌駅のスタンプのデザインは時計台を描いたものですごくいい雰囲気だった。
おぉ~かっちょええなぁ。見に行ける時間はあるかなぁ。
そんなことを思いながらスタンプ帖を見つめた。
◆「座れるかな~」なんて世間知らず・・・
あぁ、そろそろ特急オホーツク1号が来る頃とちゃうかな。
できれば窓側の席に座りたい。
そう思って僕は輪行袋と旅行カバンを担いで4番線ホームへと急いだ。
6両編成中の半数にあたる3両が自由席ということなので、
期待も半分でホームにやってきた僕だが、その光景を見て呆然とした。
何と、これから開こうとしている各扉の前に人が2列で並び、
後ろの3番線に達してなおかつ蛇行する「長蛇の列」が出来ていたのだ。
この時点で「窓側の席」どころか着席さえ無理。
睡眠不足のまま立ち席で行くことを余儀なくされたのだった。
やがて列車の扉が開き、乗客が車内へとなだれ込んだ。
いや、途中からはなかなか乗客が進まない。やはり、この乗客数。
まだドアにも到達できずホームから車内を見ると、
すでに車内の通路には立ち客の姿が見える。
僕はというと、なんとか列車のデッキ内には入れたものの、
それ以上は無理!という状態からさらに3人乗車、押し寿司状態。
輪行袋がつぶれないように身体を張って守るような状態で
列車の扉が閉まるのを待つしかなかった。
「何でこの列車を選んでしもたんや!」
悔やんでも遅かった。
◆押し寿司列車、出発!
7:03。特急オホーツク1号の扉は閉まり、札幌駅を出発した列車は東へ。
僕にとっては先ほど通ったばかりの路線、苗穂、白石を再度通ってから
千歳方面と分岐し、函館本線を岩見沢方面に向かう。
列車内はまさしくサウナ状態。
エアコンが効かないのか、デッキだからなのか、汗だくになって輪行袋を守った。
岩見沢までは約30分。
僕の普段のサウナ入浴時間は平均10分だが、それよりきつかった。
その30分をなんとか耐え抜き、ドアが開いたときの涼しさ!
なんだか水風呂に入ったときのような爽やかさだった。
もうろうとした頭が冷めてくると、ようやく景色にも目がとまった。
ホームの向こうに見えるのは機関庫か何かだろうか。
そんな光景を見ながら束の間の休息を味わったのが1分間。
しかし、かすかな期待の「降車人数」は0! 当然と言えば当然。
列車は再び走り出した。次の駅は滝川。またも約30分。
この旅行とも体力トレーニングともつかない時間をまた乗り越え、
汗だくの体に沁みる、爽やかなそよかぜを滝川駅到着と同時に感じた。
それでも、またしてもこの車両からは誰も降りなかった。
その後も深川駅でも同じ経験をし、とうとう旭川までやってきた。
ここではたくさんの人が降りたのだが、自分が降りるのもここ、旭川駅だ。
僕はここで特急オホーツク1号を見送った。
さぁ、富良野線乗り場へGO!。
◆旭川駅って広いなぁ
オホーツク1号が到着したのは一番左の1番線。
そこから4番線まではごく普通にならんだホームである。
しかし、富良野線乗り場の5番線までは長い通路で100m以上離れ、
そこまで延々と歩いていかなければならない。
北海道に到着した初日は、
オホーツク1号の車内といい、旭川駅の通路といい、
汗だくのまま進んでいきそうな、そんな予感。
ほんとにここは「涼しいと噂の」北海道なのかぁ?
汗だくで階段を昇ってたどり着いた富良野線ホームには2両編成の気動車。
のどかな風景のイメージにピッタリの列車だ。
次の富良野線列車がここを出発するのは8:43だ。
僕は汗かきかき階段を昇り到着してまだ残り2分の余裕があったが、
悠長に歩いているおばあさん方は時間ギリギリ。長い通路は結構大変そうだった。
それでもそこは田舎のローカル旅情たっぷり。
出発時刻の少々の遅れはそれほど気にしない感じで出発時刻を回っていた。
僕も「まだもうちょっと待ってくれそうやな」と思ったのでちょっとホームに降り、
自販機でジュースを買って一息入れた。
もちろん車両の運転席後ろに輪行袋をくくりつけてからである。
◆富良野線でようやく感じた北海道~きもてぃー!~
2分ほど遅れてわずか2両編成の列車は旭川駅を出発した。
この2両編成、先頭は富良野行き、2両目は美瑛で切り離しとなるようだ。
そしてそれぞれの車両に名前がついて、サボが差し込まれていた。
富良野行きにはラベンダー、美瑛止まりには しろがね という表示。
出発した列車は爽やかな風を車内に運び、神楽岡駅、西御料駅と進んでいく。
この駅からなんと4つの駅連続で「西・・・」という駅が続く。
しかし、その4番目西聖和駅は通過駅だった。
さらに次の次、北美瑛駅もこの列車は通過する。
鈍行なのに通過する駅があるということに驚きつつも、
僕はそろそろ窓の外の景色に目を凝らし始めた。
それは「ラベンダー」の花畑が列車内から一望できるような所がないかと、
まったく下調べも何もない「沸いて出たような期待」をし始めたからだ。
この車両名を見て、思い出したかのようなラベンダーの存在だった。
そうしているうちに中間の街の駅、美瑛駅に到着した。時刻は9:16だ。
定刻通り。旭川駅でおばあちゃんを待って遅れた2分は簡単に取り戻した。
また、旭川駅では汗だくだった僕も、この頃までには清々しい顔に戻った。
美瑛駅での停車時間は7分ある。
この駅で2両編成の2両目「しろがね」車両が切り離されるためだ。
僕はその7分の停車時間の間に改札を出、下車印とスタンプを押した。
が、この駅のスタンプは、JRが設置している定型スタンプだけでなく、
大雪山観光協会が置いたスタンプ、そしてそれとはまた別個に、
大雪山国立公園指定50周年と書かれたスタンプも置かれていた。
僕はこの時点ではまだ美瑛という地名をあまり知らなかったのだが、
有名な写真家「前田真三」氏の素敵な写真と写真館、
それからポテトチップスなどで(笑)知られるようになる名所だ。
僕がホームに戻った時には後ろの車両「しろがね」はすでに切り離されており、
1両きり、身軽になった気動車が9:23に定刻通り出発した。
さて、時刻表を見る限り、他にはあまり重要そうな駅は見当たらない。
(ただ単に発着時刻の両方が載っている駅がないという判断だが…。)
それで、列車はこのあとまっしぐらに富良野に向かうのかと思っていたのだが、
途中の中富良野駅には9:51着で9:57の発車まで思いがけず6分停車。
ここで上り列車の到着を待ち、その発車を見送ってからの発車らしい。
というわけで僕はここでもやはり駅員さんに下車印をもらい、改札を出てみた。
するとそこに観光旅行記念という切符があった。
なぜかここ中富良野駅ではなく上富良野駅の入場券だったが、
僕にとってはそんなことはどうでもよく、そのデザインと希少性に魅せられて、
何の迷いもなくすぐに購入してしまった。
こうしてわずか6分の時間も無駄にすることなく、
いいものをGETして僕は車両に戻り、富良野への旅を続けていった。
10:07。僕が乗車していた627D単行気動車は富良野駅に到着した。
降車客の最後に輪行袋をほどき、肩に掛けてゆっくりとホームに降り立った。
そこでは何だかとっても聞き覚えのある馴染み深い音楽が・・・。
あ~あ~ あああああ~あ~ ああ・・・
これでわかった人はすごいと思うが、富良野といえばコレ!の曲、
「北の国から」のテーマソングで、さだまさしの歌声が延々とめどなく流れていた。
思わず田中邦衛の真似をして「ほたる!」などと言ってみる人が結構いそうだ。
駅舎を出て見ると富良野のカントリー調の駅前の雰囲気が目に入る。
本当に時間がゆっくり流れていると錯覚しそうな、とても素敵な街だった。
駅の並びにはやはりお洒落なお土産屋さんがあった。
お店の名前は、「ちょっと富良野」。
そこで僕はキタキツネの絵の丸いステッカーと金色のキーホルダー、
そして手のひらサイズくらいのキタキツネのぬいぐるみを購入した。
おなかを押すと音楽が流れるのだが、曲は「潮騒のメロディー」。
ここは北海道のド真ん中なのだが・・・・。
ちょっとした買い物が終わってゆっくりと駅舎に戻った僕は、
輪行袋を降ろして立食いそばのカウンターで天ぷらそばを食べた。350円。
やっぱり立ち食いそばはおいしくてリーズナブルで嬉しい。
それから隣りのKIOSKで、道内時刻表という北海道専用の時刻表を買った。
これが持ち運びに便利!ローカル情報豊富!と、旅行中非常に重宝した。
◆富良野線・来た道を帰る・・・
その後、10時45分に改札前に戻った。
着実に下車印が押されていく北海道ワイド周遊券を片手に、
肩からは輪行袋をかけて、跨線橋を渡っていった。
富良野線の車両はすでにホームに停まって出発を待っていた。
念のため買ったばかりの道内時刻表をパラパラとめくりながら、
滝川に向かう根室本線の鈍行がないかと確認してみた。
しかし、午前中にはないことがわかったので、富良野線で戻ることに。
さようなら富良野。時間つぶしで来るにはもったいない街だった・・・。
乗り込んだ富良野線の車両にはやはりラベンダーと書かれていた・・・。
というか、先ほど旭川から僕が乗ってきた車両がそのまま折り返すようだ。
ホームにいたこの車両の運転士さんに「あと何分で出発ですか」と尋ねると、
あと4分あるとのことだったので、ジュースを求めて再度駅舎内のKIOSKへ。
ファンタグレープをGETして戻ってきた。
10:50。予想に反して結構混雑した状態で富良野線の車両は走り出した。
僕が座った座席はあるおばあさんの隣りで、進行方向の左側・通路沿いだった。
僕はこのたびも窓の外にラベンダーが見えるところがないだろうかと
じっと目を凝らして近くの景色も遠くの景色を眺めたが見つからなかった。
さて、鈍行だと思っていたこの車両は学田駅、鹿討駅を通過。快速のようだ。
最初の停車駅である中富良野駅到着直前、山の上の方を見上げてみると、
ほんの一箇所にだけ青紫色のじゅうたんラベンダー畑が見えた。
じゅうたんといってもキッチンマットくらいの小さいイメージだが。
その時隣の席に座っているおばあさんが言った。
「あれぇ、あそこにまぁだ刈りとっちょらん畑があるねぇ」
そうなのだ。僕が訪れたこの8月半ばは、ちょうど刈り取りを終える時期。
年中いつでもラベンダーが咲いているわけではないのだ。
このあと、降りてみる余裕のある駅はひとつもないので少し仮眠をとった。
昨夜の急行はまなす号である程度は寝たのだが、ここにきて疲れが出てきた。
美瑛をすぎた頃に目が覚めた僕はぼんやり外を眺め、旭川に着くのを待った。
さて、この車両が旭川駅に到着するのは11:55の予定だが、
そこから僕が乗りたいと思っている特急ライラック12号は12:00発。
普通に考えれば十分な乗り換え時間のように感じるが、
とにかくあの長い乗換え通路を歩かなければならないのだ。
5分は「十分」ではなく、「たったの」なのである。
11:55。富良野線の列車は予定通りに旭川駅に到着した。
遅れはしなかったのでまずは一安心・・・と言いたいところだが、想定外の状況が待っていた。
いつの間にか混雑していたこの列車からは大勢の人が降り、
しかもこの人たちは歩くのが非常に遅いのだ。
僕は耐え切れず、「す、すみません。ちょっと通してください!」
何度もそう言って進路を確保、長い通路を進み、駆け足で階段を昇った。
すると時計は12:00を指した。
ライラック号の発車を知らせる放送の中、僕も何とか飛び乗ることができた。
というわけで、僕の記憶の中の旭川駅はここに来た時もこうして帰るときも
「汗だくになった駅」。
こうして扉が閉まり。ライラック12号室蘭行きは走り出した。
ちょっと息を切らしながらもいつものようにデッキの手すりに輪行袋を結び、
自転車が倒れないようにしっかりと固定して客室内に向かった。
朝乗ったオホーツク1号とは違って、扉付近まで人で溢れかえる!
という状態ではなかったのでちょっと安心した。
僕が乗る座席は当然ながら自由席だ。北海道ワイド周遊券フル活用である。
客室内には立っている乗客はいなかったが空席はなかなか見当たらない。
左・・右・・左・・と、丹念に座席を確認しながら空席がないかと探す。
すると車両前方の左の席がひとつだけ空いていた。よかった!
寝不足気味の僕は迷わずそこに座り、目を閉じた。
しかし、旭川から深川までの区間はトンネルがとても多く、
耳がぼわ~んとなる、トンネル特有の現象におそわれたのだが、
それと同時に子どもの乗客が「またトンネルだよ!」と叫ぶ声もけたたましく響く。
そんなわけで、なかなか熟睡するには障害が多かった。
僕は寝るのを諦めて先ほど買った道内時刻表を取り出して、
今後の計画を復習、および練り直ししていった。
もちろん指定券を取ってあるところについては変更することはないが、
そうでない部分についてはまだまだ色々と考える余地を残してある。
例えば、札幌の西山君の家を中心にして動く4日間は、
札幌近郊の幾つかの場所に行きたいと思っている。
小樽・千歳空港その他・・・・どれくらい行けるかわからないが、
計画について考えているだけでも十分楽しい。
道内時刻表は結構楽しい時間を僕にくれた。
夢中になっているうちに車内放送がなり、札幌が近いと知らせた。
僕は慌てて席を立ち、デッキに行って輪行袋をほどいた。
なぜなら自転車が壊れないためにできるだけ真っ先に降りられるように
準備するよう心がけているからだ。
旭川から約1時間半の13:34。ライラック12号は札幌に到着。
列車は5分間停車するが、僕はさっさと下車し、札幌駅の改札を抜けた。
◆札幌駅で・・・
そして、数日間お世話になる西山君に急いで電話をした。
「今、札幌駅に来てるんやけど、今からどうしたらいい?」
「あ、もう札幌に着いたの?僕さぁこれから昼ごはんでさぁ、
食べ終わったらコーヒーでも飲みたいからさぁ、2時半くらいに・・・」
北海道民はこの大地の広さのようにのんびりしているのか?と思ったが、
すべてを道民のせいにしてはいけない。彼固有の性格なのかも。
とにかく、2:30までの一時間がまるまる空白になった。
壮大な時間つぶしをしてもまたさらに時間つぶし・・・。
待ち合わせまで少なくとも45分あるので食事をすることに決めた。
輪行袋はホームの片隅の、邪魔にならない所に縛りつけ、
駅構内のフードコートにある、とある中華料理店に入った。
まずは札幌ラーメンを!と思ったが、ここはラーメン屋ではなく中華料理店。
普通のラーメンはメニューになかったので、広東麺というものを注文した。
メニューにあったとおりの大きなえびが上に乗っていてなんとも豪華。
しかも550円!安い!。でも、食べてみると驚くほど麺が少ない!
なんだか得したような損したような、イマイチな気分で店を出た。
まだ時間があったので札幌ステーションデパート内を見て回っていたのだが、
ふと、思い出したようにみどりの窓口に戻ってきた。
それは北海道脱出日の夜行列車の切符が取れていなかったからだ。
もっと正確に言うと、札幌から直通の北斗星の切符を取れなかったため、
苦し紛れに買った青森からの特急ゆうづる号の切符を持っていたからだ。
それで北斗星のB寝台個室「SOLO」にキャンセルが出ていないかどうか、
念のため、みどりの窓口で確かめてみることにした。
当然ながら個室ソロも、普通の解放寝台もキャンセルはあるはずも無く、
期待ははかなく砕け散った。だめもとだからショックはない。
しかし、帰りに前橋に向かうことになっているため、
できれば常磐線経由ではなく東北本線経由で帰りたいと思い、
特急はくつる号の寝台券がないかについても確かめた。
残念ながらこの時点ではGETできず。
さて、西山君との待ち合わせ時刻がようやく近づいてきた。
ホームに置き去りにしてある輪行袋を取りにいき、
待ち合わせをすることになっている改札前に立って再会の時を待った。