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【1988年8月18日】帯広駅の奇跡。ワイングラスと白糠駅

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ゾーン539・エプロン 鉄道旅行記

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砂場を掘ったらダイヤモンド!

雨ににじむ帯広駅前。僕はバスから駅舎内へと駆け足で進んだ。

この後の予定はというと、札幌に向かう上り急行まりも号に乗ること以外は何も決まっていない。しかし、できるだけ長く乗車して眠ることが僕の願いだった。とはいうものの、次にやってくる特急おおぞら9号は帯広を出たら釧路までノンストップで、そうなると早く着きすぎた釧路駅で延々と待つという選択肢しか残らない。

う~ん、何かこの時間を有意義に過ごす方法はないだろうか。

ということで、熟慮の末に次のような計画とした。
● 20:15発231Dで池田へ。池田駅20:43着。散策。
● 池田駅21:08発特急おおぞら11号で白糠へ。22:16着。

ちなみに、おおぞら11号は前日も確認した通り新富士駅で急行まりも号と交換のため、釧路まで乗ってしまうことはできない。

さて、そうと決まれば帯広での滞在時間はまだ2時間以上あることになる。さぁ何をしよう?あ、そうだ!例の、無駄だと分かっていることをここでもやってみよう!ということで、帰りの北斗星2号のB寝台個室「ソロ」のきっぷがないか、みどりの窓口に尋ねに行った。わずか8室。乗車日前日。まさに砂場の中でダイヤモンドを探す作業である。

「キャンセル出てますね!」

1988年8月。北斗星2号B寝台個室ソロのチケット

1988年8月。北斗星2号B寝台個室ソロのチケット

おぉ~! 何ということだろう。
あるはずがないと思っていたチケットがついにここで手に入ったのだ!
ここまで、ゆうづる⇒はくつる⇒北斗星2号B寝台解放と、徐々に希望に近づいてきていたきっぷがようやくこの手に!
※乗変は1回しかできないのではくつるのチケットは手数料を払っての返金。

喜びに胸いっぱいではあったが、時間を持て余していることとお腹がすいている事実だけはどうしようもなかった。それでとりあえず駅構内をぶらぶらすることにした。

ふと入ってみたKIOSKで、僕はあるものにふと目を奪われた。それはちょうどこの年の春に開業したばかりの青函トンネル(愛称“ゾーン539”)のデザインのエプロンだった。

ゾーン539・エプロン

ゾーン539・エプロン(今も現役!)

「こんなのがあったら僕も料理するようになるかも・・・?」そんな口から出まかせが後に現実となる、スペシャルエプロンが僕の財布のひもをついに緩ませた。そして緩んだひもは定番商品の「愛国駅から幸福駅のきっぷ」の購入にまで動いてしまった。おぉ、そろそろ閉じなくては・・・。

あ、僕のお腹はまだ満たされていないぞ・・・。

大きなワイングラスの駅へ

何を買ったかはよく覚えていないが、とにかく小腹を満たして改札が始まるのを待った。乗車する231Dは帯広始発ではなく新得発なのであまり早い時間から改札するわけではないが、それでも19分停車なので20:00になる前には始まっていた。釧路行きの鈍行最終便である。この後に続く列車はおおぞら11号と池田行き443Dのみとなる。したがってある程度まとまった利用者たちが改札を通って乗車していった。

僕も乗り込み、自転車はデッキに括り付けて座席に陣取った。池田まで約30分の旅となる。20:15に列車は動き出した。空いた時間が出来たので立ち寄ってみようと決めた池田駅はどんな駅なんだろう?ちょっと期待を膨らませながら過ごした時間はあっという間だった。

20:43。 到着したホームに降り立ったが駅舎らしきものは見当たらない。まさかの棒線ホームだけの駅?と思ったがその疑問はすぐに解けた。ホームの先端に跨線橋があって、千鳥配置された反対ホームに渡ると駅舎があることが分かったのだ。ホームにもいろいろな配置があるものだなぁとあらためて感じた。

午後9時になろうとしている池田駅の改札を抜ける人はわずか数人。雨は一旦止んだようだ。足早にどこかへ向かう人たちが消えると駅は静寂に包まれた。

池田駅スタンプ・ワイン城

池田駅スタンプ・ワイン城

駅舎はこじんまりとしていたが、一歩外に出ると素晴らしいものが目に入ってきた。スタンプに描かれていたワイン城をPRする素敵なモニュメントがこちら。

ワイングラスのモニュメントが待つ池田駅

ワイングラスのモニュメントが待つ池田駅

中心に鎮座するワイングラスに向けて四方八方から噴水の水が注がれていて、赤いライトが下から照らすことでワインに見立てているのだ。もう少し深い赤紫だったらもっといいかな?なんておもったりしたが、とにもかくにもとても魅力的な駅の一つとして印象に残った。やっぱりノンストップの特急おおぞら9号で釧路に急がなくて良かった!
(※ 現在も池田駅にはワイングラスの噴水が存在するが、グラスのデザインが変更されており逆三角錐形になっている)

ワイングラス型のスタンプも池田駅にあった

ワイングラス型のスタンプも池田駅にあった

先ほど帯広駅から乗車してきた231Dは池田駅に30分停車。つまりまだホームにそのまま停まってエンジンを響かせている。それはおそらく次にやってくる特急おおぞら11号への乗り換えと特急から乗り換えてくる利用者のためなのだろう。

千鳥配置のホームなので並んで停車することはないが、一瞬のコラボを見ることはできる。その瞬間までにはまだ10分くらいある。改札の上にはこの後の列車たちが3つまで表示できるのだが、そこにはまもなくコラボする2つの列車だけが表示されていた。「そうか、その後の列車はこの駅までだったな。」そんなことを頭の中で整理しながらもう少し待った。

さぁそろそろホームに入ろうかと思ったその時、高校生くらいだろうか2人の女の子が現れて、「駅員さん、一緒に写真に入ってくださ~い」と声をかけていた。デレデレした駅員さんを横目に周遊券だけ見せてホームに進んだ。後ろでカメラのフラッシュが光った。

やがて帯広方面から4つのライトが見え、国鉄色を保ったキハ183系が「水も滴るいい男」という感じでやってきた。

最後の途中下車 ~白糠駅へ

21:08 ドアが閉まり、おおぞら11号は走り出した。231Dの姿を正面のドアの窓から見ながら、エンジンの高鳴りを感じた。231Dはどんどん遠ざかっていく。いつものように輪行袋をデッキの手すりに括り付けて自由席に座った。

しばらくすると車掌さんが近づいてきて、「失礼します。デッキのところにある自転車はお客様のですか?」と尋ねられた。すごい眼力だ!と言いたいところだが、車内にはあまり多く乗客がいなかったので見当がついたのだろう。僕がうなずくと続けて、「どちらからご乗車ですか?」とたずねられたので、僕はどこから話したらいいのかふと迷ったあげく、前日の「根室から急行ノサップに乗りまして、まりも号で札幌に行って、北斗80号で苫小牧に行って日高本線・JRバス日勝線と十勝バスを乗り継いで、もう一回急行まりもに乗るために白糠に向かっています」と説明した。

よくよく考えれば、輪行袋の荷物のことを尋ねてから乗車駅のことを聞いてこられたのだから普通に「JR線を乗り継いだ初めの駅である帯広」と答えればよかったのだろう。手回り品きっぷが本来なら必要でそのための確認だったのかもしれない。ただこの当時の対応は各地でマチマチで、一つ一つの列車ごとに求められたり、一連の連続乗車で1枚で良かったりいろいろだったが、この度は「ご苦労さんですね! お気をつけて。」とただねぎらって下さった。

さて、もう少しで白糠駅に到着する頃、ちょっと早めにデッキに立った。自転車の固定ひもを解いてしっかり肩に掛け、いつでも降りられる準備万端だ。それは「霧雨煙る駅でライトの帯が前方を照らす特急」の姿を撮影したいと思い立ったからだ。

特急おおぞらキハ183系スラントノーズ

霧雨の白糠駅で。特急おおぞらキハ183系スラントノーズ

写真の腕がついていかず、己の限界を知る作品となったが、僕の心に残るあの風景を思い出させてくれるには十分の一枚だ。おおぞら11号はタイフォンを鳴らし、あと一駅先へと急ぐ。僕は霧雨の中手を振って見送った。

時刻は22:15を少し回ったところ、白糠駅の改札を出てキョロキョロとスタンプを探した。見つからなかったので駅員さんに尋ねたところ、意外な返事が返ってきた。

「いいのがありますよ」

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