●気仙沼線柳津以北・鉄道復旧を正式断念~BRTへ~
2011年3月11日の東日本大震災から5年経過し、一歩ずつ復興に向かっている宮城県沿岸地方。ここにも津波によって流されて列車が走らなくなった路線があります。
それが気仙沼線。
東北本線・小牛田駅から石巻駅に向かう石巻線のほぼ中間に位置する「前谷地駅」を起点に分岐し、北方へと進路をとる路線で、柳津駅までは比較的早い段階で運行再開にこぎつけました。
しかし、柳津から陸前横山~志津川~気仙沼については復旧工事が進む気配は全くなく、暫定復旧となるBRT路線の工事と自治体との協議のことしか聞かれませんでした。
●BRT運行の利点が大きい南三陸町
まず何より大きいのが運行頻度でしょう。閑散区間である柳津~志津川でさえ、ほぼ1時間ヘッドでの運転が実現しています。震災前はというと、快速列車の運転こそあったものの、それを除くと日中に5時間もの間が空くことさえあったのです。その点の改善は明らかに沿線自治体(特に南三陸町)にとって大きな魅力になったと思われます。
また、ベイサイドアリーナなど、追加停留所の存在もあるでしょう。鉄道復旧によってその利便性が失われるのはマイナスだという考えも理解できます。
●気仙沼市の願い
そうして、南三陸町と登米市は先にJR案を受け入れ、「BRTが正式復旧」つまり鉄道復旧は断念するという案を受け入れたのですが、最後まで待ったをかけていたのが気仙沼市です。
外部から見ると「気仙沼には大船渡線からのルートもある」と見えるわけですが、大船渡線はその大半が岩手県。やはり宮城県内で完結する気仙沼線の復旧が実現するならその方がいいというのが正直なところだったようです。
気仙沼市の要求
BRTの継続運行に関して、気仙沼市は「運行頻度と速達性の確保」「仙台へのアクセスの確保」「地域振興・観光振興への貢献」「地域事情への配慮と利便性向上の追求」 などの要求をJR東日本に出していました。
JR東日本からの返答
現状見られる「高い運行頻度」の維持や、鉄道レベルに近い速達性、大船渡線・東北新幹線を利用できる割引切符の設定、大船渡線と東北新幹線(一ノ関駅)の接続改善、といった前向きな返答があり、気仙沼市も「市民の理解が得られた」として合意に至ったようです。
●注目したいJRの返答がもう一つ!
実は、もう一つ注目の返答がありました。それは「仙台~気仙沼間を大船渡線経由で直通する快速列車の設定」というものです。震災前まで気仙沼線には快速南三陸号という列車があり、仙台と気仙沼を結んで走っていました。この列車に全線乗るという利用者がどれだけいたのかはわかりませんが、少なくとも仙台駅を発車する時点では満席になる人気の列車でした。
気仙沼線の鉄道復旧を断念した今、その列車を再現することは不可能になってしまったわけですが、それでも大船渡線経由であれば同じ区間を別経路で走る列車設定は可能というわけです。
過去にはそんな列車があった!
もうずいぶん古い話になりますが、1960年6月から1982年11月(東北新幹線開通時)にかけて、仙台から気仙沼を経て大船渡市の盛駅までを結ぶ列車、急行むろね号が走っていました。その改正後は一ノ関発着の快速むろね号として1993年まで、さらに改名して快速スーパードラゴンとなって2013年まで走っていました。
で! 今度仙台発着の気仙沼直通列車が走ると、急行むろね号の快速版、快速むろね号復活ということになるのかも!と今からワクワクしているのです。というわけで、気仙沼線×鉄道復旧断念=快速むろね号復活という、期待を込めたタイトルとさせていただきました。