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【1985年2月】プチ鉄道旅行・信楽線の旅

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スタートはいつもの京阪電車
国鉄奈良線で京都へ
国鉄草津線で貴生川へ
国鉄信楽線に乗って・・・

中2の頃、僕には鉄道旅行と呼べるような旅は無縁だった。
でも、一回だけちょっとした日帰り旅行に出た日があった。

それは2月前半のある日。
同じ近畿圏内ではあるものの、京阪神のネットワークからはずれた場所、信楽。

信楽線は廃止計画が何度となく持ち上がる中、
利用促進の呼びかけに町民が答え応じて利用者目標をクリア。
さらにハードルが上がってもクリア。と、価値意識の高さが覗える。
そんな魅力的な(と、期待する)信楽線はちょっと昔感覚のローカル線だ。
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◆スタートはいつもの京阪電車

僕は久し振りのミニ鉄道旅行とあって気合が入っていた。

京阪電車の始発電車に乗るため、5時に家を出て牧野駅に行った。
早朝の5:16。普通:三条行き。この三条行きというところがなつかしい。

真冬の2月、早朝5時台はまだまだ真っ暗だ。
牧野駅から乗った2600系電車も闇の中をひた走った。

樟葉駅は構内だけが明るく、くずはモール街も松坂屋も住友銀行も真っ暗。

八幡市駅を出るとすぐに大きく左にカーブしながら坂を上り、
木津川、宇治川を連続して渡る二つの鉄橋がある。
ここは京阪電鉄のカレンダーに必ず登場する撮影名所のひとつ。

しかし、こう真っ暗だと景色は分からず、
ヘッドライトが照らす行く先と響き渡る轟音だけが鉄橋らしさを主張している。

渡り終えると左側に淀車庫があり、まだ寝起き前の車両たちが眠っている。

淀駅に到着。
ここは京都競馬場の目の前で、天皇賞ほか開催日だけ異常に賑わう。
逆に、それ以外の時は全く違う場所かと感じる、浮き沈みの激しい駅だ。

ここからは宇治川堤防を右に見る、静かな区間を走る。
中書島までのこの区間は結構長い距離がある。

早朝に起きたからか、このあたりから少し眠気が襲ってきた。
列車は伏見桃山、丹波橋、墨染、藤森、深草、伏見稲荷と止まったはずだが、
居眠りから覚めたのは鳥羽街道。

なんと乗換駅である東福寺のひとつ手前だった。危ない危ない。
それにしてもまだ暗い。「冬の早朝ってこんなんなんやなぁ」と改めて気付く。

東福寺で降りた後、同じ島式ホームの向かい側にくる国鉄奈良線を待った。

◆国鉄奈良線で京都へ

この“ボーダーレス”な1面ホーム、僕が奈良線を愛好している理由のひとつだ。
旅行帰りの切符を回収されない仕組みから、この後数年にわたり恩恵を受けた。

国鉄奈良線には、少し前までキハ35などが走っていた。
直前の1984年10月に直流電化され、105系が投入された。
いわゆる、電化区間のローカル車両である。
京都駅までのわずか一駅でもこのローカル・テイストを味わえるのは嬉しかった。

京都駅8番線(現10番線)にゆっくりと滑り込んだ。
いつもなら当たり前の、特急雷鳥の姿もない。

階段を上り左に近鉄改札を見ながら跨線橋を昇ると、2番線に快速電車が来た。
グッドタイミングで113系電車に乗り草津を目指した。

しかしふと思った。「日帰りなのに、こんな真っ暗な旅じゃおもろーない」

そう思ったころ大津駅に着いた。そして思わず電車を降りてしまった。
乗っていた電車は去り、冬の冷たい風が吹き抜けていった。
「やっぱり乗って行ったらよかったかな・・・」との思いがよぎったその時、
そこに偶然も偶然! すごいサプライズが近付いていた。

ホームに響く構内放送。
「列車が通過します。ご注意ください・・・・」

そこで目をやるとEF58の姿!
それだけでも大喜びだったが、後ろに続く列車はなんと12系の旅客編成、
つくば博PR列車サイエンストレインでコスモ星丸デザインのテールマーク付だった。

あまりに突然の出来事だったので、写真はボロボロ。
でも、偶然出かけたその日にこの列車に出会えるなんて凄いことだった。
興奮冷めやらぬまま大津駅のホームで、少し明るくなりかけた空を見上げた。
そしてやってきた次の列車で草津を目指した。

◆国鉄草津線で貴生川へ

草津に着くと向こうの端のホームにいる草津線車両が見えた。
同じ113系だが、最前部の表示幕が赤背景に白文字で「草津線」とある。

僕はそちらを目指して跨線橋を渡った。
明るくなってきたとはいえ、HEIWADOの鳩のマーク以外はあまり目に付かない。

以前この線に乗ったときと同様、あたりには雪がちらほら積もっている。
それでもこの日は比較的暖かく、降ることはなかった。

草津線のホーム、柘植・貴生川方面はほとんど無人に近かった。
僕はその貸し切り状態の列車で貴生川までの旅を楽しんだ。
雪がところどころに残っている田畑が車窓を流れて行き、
普段の行動圏の外に出たぞ!という感覚が嬉しかった

到着した貴生川駅。

ここは草津線を中心に、左に近江鉄道線、右に信楽線が発着している。
ちょうど両方に列車が留まっていた。

近江鉄道は西武鉄道系列だからか、西武線の電車のような薄黄色。
そして、僕が目指す信楽線はキハ28が担当している。

◆国鉄信楽線に乗って・・・

先程までいた場所より少し寒いのか、湯気が立ち上り、僕の息も白くなっている。
エンジン音を響かせ、2両の列車が走り出した。線路は大きく右にカーブ。

平行する国道307号線と離れたり近づいたりを繰り返しつつ山間の線路を進む。
なんとも険しいところをずっとずっとずーっと走っていく。
10分後、ようやく山から里の雰囲気に変わってきた。しかし、駅はまだない。

今では紫香楽宮跡駅ができているが、当時はまだ駅がなかった。
それで貴生川駅から1つ目の駅は貴生川から10キロ以上離れた雲井駅。
時間にして15分も経過。

このあたりからは開けた田園風景が広がったり時折小高い山があったり。

先ほどの長い駅間距離とはうってかわって、わずか2kの所に勅旨駅(ちょくし)。
周辺には信楽焼のお店がちらほら見えたりする。

勅旨駅を出て、また3分ほどで終点の信楽駅が近付いてきた。
街の中心地だけあって、いくらか開けてはいる。

言うまでもなく、終端駅。
ここからは奈良方面への国鉄バスが人々の足。
僕はここまでで引き返すのだが、駅をじっくり楽しむ時間はあった。

古い木造駅舎そのままに、隣りには小屋のような売店がある。
まさに僕が見たかった田舎の駅である。

駅前ロータリーは乗客を迎えに来たマイカーとバスが一台いるだけで静か。
国道から100m程度離れている、ちょっといい位置関係だ。

駅前を少し楽しんで時を過ごした僕に、
「そろそろ行くぞ!」と言わんばかりにキハ28のタイフォンがなった。

帰りの出発の時間だ。
日帰り鉄道旅行後半は眠気との戦いだった。

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